第4次産業革命が到来、グラフで探る経済への影響


モバイルインターネット、オートメーション、AIがもたらす根本的な変化とは

第4次産業革命の経済的・政治的影響は、過去50年のアウトソーシングとグローバル化の影響に匹敵するものになりそうだ LINCOLN AGNEW

ByChristopher Mims2018 年 11 月 14 日 15:27 JST

「これが、話題?の第4次産業革命の流れ
コンピュータの民生利用の功罪は、人手を減らし生産性の向上に役立ったが、その一方で、ラストベルトの様な地域を生み出した。その革新の波に付いて行けない職種にあった人達を生み出した事なのかも知れない。時代の変化とはそのようなものだ。そして、その変革の嵐は留まることを知らず、さらに次の大きな波となって押し寄せている。それが、第4次産業革命と言える。これまでの変化の流れをさらに演繹的に推し量れば、どれだけ世界は、環境は変わるのだろう。AIに怯えるのではなく、その存在の理由を見つけ、挑戦する人間でなければ、楽しくないかもしれない。環境が変わってしまえば、ビジネスとかは、小さな問題で、生き方の問題にまでなるのかも知れない。
「子供たちをどのような仕事に備えさせるかについて考える上で忘れてならないのが、現在雇用が最も拡大していて人材が最も不足しているのはIT(情報技術)分野で、この傾向は恐らく見通し得る将来において続くということだ(図2)」という。ビジネスだけから見れば、そうかもしれないが、個人の人生から見れば、みんながそうなるわけでも、成りたがるわけでも、適性からそうなれるわけでもない。しからば、社会のサービス環境を利用して、いかに楽しく生き抜くか、子供と一緒に考えて行く必要もあるかも知れない。」

 これまでに起きた3度の産業革命は石炭と蒸気、電気と自動車、コンピューターがそれぞれ原動力となった。われわれは今、4度目の産業革命の興隆を目にしているのかもしれない。すなわちモバイルインターネット、オートメーション(自動化)、人工知能(AI)にけん引された経済だ。

 この見解は、世界経済フォーラム(WEF)の設立者であるクラウス・シュワブ氏が「第4次産業革命」をテーマした2016年のWEF年次総会で示したものだ。

 先の産業革命はいずれも、後から測定するのが容易だった。生産された鉄鋼の量や路上を走る自動車の数、パソコンの家庭への普及率などを測ることができた。最新の革命はまだ始まったばかりのため、スマートフォンやモノのインターネット(IoT)、クラウドコンピューティングが台頭した過去10年のトレンドから未来のヒントを探るしかない。

 シュワブ氏の発言から2年のうちに、そうしたトレンドに一挙に拍車がかかった。スマホの構成部品から無線ネットワーク、データセンターに至るまで幅広いテクノロジーがにわかに強化され、これまで以上に広範でスマートな新種のオートメーションが可能になっている。それは製造や物流、輸送業界だけでなく、あらゆる業界に影響を与え、その影響がホワイトカラーとブルーカラー双方の職業に及ぶという点においてユニークだ。

 現在目にしているのは、われわれが知っていた形の仕事の終えんか、人間が行う仕事の「単なる」根本的な変化のいずれかだ。いずれにしろ、その経済的・政治的影響は、過去50年のアウトソーシングとグローバル化の影響に匹敵するものになりそうだ。

 こうした状況を理解するのに役立つのが、新旧経済のトレードオフや世界の国内総生産(GDP)を拡大しているインフラ、産業、仕事に焦点を当てた以下のチャートやグラフだ。産業ロボットの数などほとんど気づかない間に加速しているトレンドもあれば、製造生産性など発展や追加投資機会の行き詰まりを示すかのように停滞しているトレンドもある。

 スマホの爆発的な普及は新たな開発の必要性を生み出した。新しいソフトウエア(アプリやAIなど)や新しいプラットフォーム(クラウドコンピューティングやブロックチェーンなど)、新しいネットワーク(4Gや5Gネットワーク)、そしてかつてはコストが法外に高かった構成部品類(各種センサーやカメラ)だ(図1)。スマホが爆発的に普及世界のスマホ出荷台数Source: IDC(単位:100万台)2008’09’10’11’12’13’14’15’16’17020040060080010001200140016002017×1465(単位:100万台)

 スマホとクラウド経済の成長は、これまでオートメーションの影響を免れていた知識労働にもそれをもたらした。しかし、知識労働では労働者の置き換えよりも、労働者の能力拡張に与えている影響の方が大きい。膨大なデータの選別などの作業が自動化され、予測分析などのツールが利用できるようになったほか、データ科学者やドローン(無人機)操縦者といった新たな職業が生み出されている。

 子供たちをどのような仕事に備えさせるかについて考える上で忘れてならないのが、現在雇用が最も拡大していて人材が最も不足しているのはIT(情報技術)分野で、この傾向は恐らく見通し得る将来において続くということだ(図2)。ハイテクの仕事ブームに米労働統計局が定義する「コンピューター」の仕事に就く人の数は 2011~17年に32%増加したSource: Bureau of Labor Statistics(単位:100万人)2011’12’13’14’15’16’170.00.51.01.52.02.53.03.54.04.55.02016×4.378(単位:100万人)

 新しい経済には単に人手だけでなく相当なインフラも必要とされ、それは日常生活では目に見えないものであることが多い。米国では何千キロにも及ぶ光ファイバーケーブルや何万基もの携帯基地局を意味し、世界ではインターネットトラフィックの爆発的増加を意味する(図3、4)。

第4次産業革命が到来、グラフで探る経済への影響

携帯基地局数も右肩上がり米国の稼働携帯基地局数Source: CTIA(単位:1000基)2000’01’02’03’04’05’06’07’08’09’10’11’12’13’14’15’16’170501001502002503003502015×307.626(単位:1000基)

 モバイル、クラウド、オートメーションと商取引が組み合わさり、あらゆる種類の消費財や産業財の流通方法が一変している。この変革で大きな注目を集めているのが、実店舗を持つ小売企業への影響とその労働者の仕事が倉庫に移行していることだ(図5)。電子商取引と雇用電子商取引業界では2007年末以降、実店舗小売業界で失われた雇用を上回る数の雇用が生み出されているSource: Michael Mandel, Progressive Policy Institute注:常勤職、平均3カ月。電子商取引にはネットおよびカタログ通販、倉庫・保管も含まれる(単位:1000人)電子商取引実店舗小売2008’09’10’11’12’13’14’15’16’17-1200-1000-800-600-400-2000200400600実店舗小売xDec. 2008x-664(単位:1000人)

 オートメーションによって倉庫の仕事は増加しているのに対して、工場労働は減少が続いている。先進国の製造業務の多くはオートメーションではなくアウトソースされているが、バングラデシュのようなアウトソース先でも縫製などこれまで自動化できなかった仕事が自動化されている。2017年の世界の産業ロボット出荷台数は38万1000台に上る(図6)。ロボットの台頭世界の産業ロボット出荷台数Source: International Federation of Robotics(単位:1000台)予測2009’10’11’12’13’14’15’16’17’180501001502002503003504004502018×421(単位:1000台)

 これまで以上に有能なロボットの台頭によって最も明白な影響を受けているのが、製造業の雇用だ。米国(およびその他のほぼ全ての先進国)では総生産性が上昇しているにもかかわらず、熟練労働者数は減っている(図7)。

第4次産業革命が到来、グラフで探る経済への影響

 だがこの産業ロボットの急増には、オートメーションを最も加速する可能性のある自動運転車は含まれていない。今日、路上を走る完全自動運転車数は数百台で、その全てがまだテスト段階にある。しかし、この分野の行方を占う主要指標となる自動運転車への研究投資額は、当初の数年間は伸び悩んだものの2013年あたりから急増している(図8)。

第4次産業革命が到来、グラフで探る経済への影響

 ロボットが人間の立ち合いの下、自力で安全に操作できるようにする、広範な技術としての自律化はさらに大規模化し、多くのロボットにさまざまな影響を与える可能性がある。その対象は日常的な業務をこなすロボット(食料品の配達など)と特殊な業務に携わるロボット(高齢者の移動を助け充実した生活が送れるようにするなど)の双方に及ぶ可能性がある。

 こうしたオートメーションの新発見の能力に不可欠なのが人工知能(AI)だ。AIはディストピア論者が主張するほど危険でもなければスマートでもない。現在のAIは人間のように思考することはできず、データを収集してパターンを特定するだけだ。とはいえ、基本的にパターン照合の進化版である機械学習は多くの分野で基準を設定し、現在、全てのAI研究の中で間違いなく最も注目を集めている(図9)。スマートマシン「機械学習」について言及した論文数。 機械学習は多くの最先端AIシステムのカギを握っているSource: Dimensions(単位:1000本)2009’10’11’12’13’14’15’16’1701020304050607080901002017×92.394(単位:1000本)

 第4次産業革命を将来けん引する要因について考察する上で欠かせないのが、革命の燃料となる基礎研究とその首位争いの状況だ。注目なのは、中国が今年、総研究開発費で米国を初めて追い抜く見通しであることだ(図10)。研究開発競争米国と中国の研究開発費。全米科学審議会の推計によると、中国の研究開発費は今年、米国を上回る見通し購買力平価ベースSource: National Science Board(単位:10憶ドル)米国中国2000’01’02’03’04’05’06’07’08’09’10’11’12’13’14’15050100150200250300350400450500$550米国x2004x$304(単位:10憶ドル)

 中国は、賃金が上昇しても製造分野で競争力を維持できるよう、15年以内にAI分野で世界をリードし、「ロボット革命」を起こすと表明している。また同国はビッグデータを活用し、世界がかつて目にしたことのない一種の「監視資本主義」を作り出している。国民の日常的な活動のあらゆる側面についてデータが収集され、それを通じて経済価値が創造・支配される社会だ。

 第4次産業革命は加速しつつある。しかし、米国は今後も海外から優れた人材を引きつけるとともに、未来の雇用にふさわしい労働者を国内で育成できなければ、次の革命は米国にはやって来ないかもしれない。

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